リーザス王国南東部、国境の街オークス。
反乱軍が本部としている建物の一室で、これから始まる会議を前にエクスはポツリと洩らした。
「…………失敗したな。僕の計画ミスだ」
「どういう事だ？ エクス」
エクスの呟きを耳にしたにペガサスが尋ねる。
「ペガサス将軍」
「エクス、将軍は君だぞ。ペガサスと呼び捨てでいい。
で、どうして計画ミスなのだ？」
「……反乱軍の数が予定していた半分にも満たないんです……
コルドバ殿やリックにも仲間に加わる容にお願いしていたんですけどね……
あの様なランス王に従うリーザスの兵など殆んどいない筈……。いや、全くいない筈だったのに……」
「バレスや、リックやコルドバも真の正義が見えていないのだろう。ワシの鉄拳で目を覚まさせてやる！」
机を叩かんばかりのペガサスとは対称にエクスには高揚の気配は無い。
「…………もしかしたら未来が見えていないのは……」
「エクス、何か言ったか？」
「いえ……」
「お前は、栄光あるリーザス白の将なのだぞ。このワシの後を継いだのだ。そして……その名を持つ歴代の将軍の名を汚さぬ為にも戦うのだ。他の将軍達もいずれ分かってくれるだろう」
「…………そうですね。とにかく決起したからには、勝たなければなりませんね」
「そうだ、エクス。ワシらはワシらの力で、この国の未来を守るぞ！ 分かったな？」
「ええ……。では軍議を始めるとしましょう」
「我々の目的は、新国王――ランスの排除です」
「国王」という言葉に、ペガサスを始めとする数人があからさまに顔を歪めるがエクスは構わず続ける。
「従って今回の戦いでは、必ずしも戦場において決定的な勝利を収める必要はありません」
「何を言うエクス！ 全ての元凶たるあの偽王めを討取らなくてどうすると言うのだ！」
エクスの発言にペガサスは声を荒げ、他の者も同様の意を示す。
「無論彼を討取る事が選択の一つである事は間違いありません。ですが我々も向うも同じリーザス軍です。これが相打つ事になれば、どちらが勝つにせよリーザス王国が大きく傷付く事になるのは避けられません」
そうなった場合、利益を得るのはヘルマンを筆頭とする諸外国である。それが明白である為ペガサスは口を噤み、他の将も沈黙するか唸り声を上げる。その内の一人、ハウレーンが疑問を口にする。
「ですがエクス将軍、戦いは今更避けられません。決定的な勝利が必要ないのならどうなさるのですか？」
「我々がすべきは、まず負けない事です。また必要なら勝って“見せる”事です」
「は？ それはどういう……」
当り前と言えば当り前の事であるその返答に、ハウレーンは更に疑問を深くする。
「現在我軍に参加してくれた人達は約六千。リーザス全軍の半数にも達しません。しかし相手方の中には参戦拒否をしている者達も少なくなく、そこまで明確でなくともランスに対して否定的で心情的に我々寄りの者達は更に多いでしょう。恐らく彼等がランスに従っているのは、バレス将軍達が彼を支持している事に加えて、彼がリーザス解放戦で見せた武勇によるものでしょう。……それが大した物ではないと彼等に見せ付けます」
「……つまり、我々が負けないでいれば、いずれ彼等はこちらに付く、という事ですか」
将軍の一人であるサカナクがエクスの説明に続けるように理解の言葉を発し、他の者達も納得した表情を浮かべる。
「そういう事です。今回、時間は我々の味方です。無論、他国がこの争いに干渉を始めるまで、という限りはありますが」
「で、エクス。具体的にどうするのだ？」
エクスはペガサスの質問に一つ頷き、机上の地図を指し示しながら説明を始める。
「まず全軍を二つに分けます。そして一隊は北のバランチ方面へ、もう一隊は西のサウス方面に向かいます。恐らく相手はこれを各個撃破の好機と見てどちらかに主力を振り向けると考えられます。
相手主力の迎撃を受けた方は遅退戦闘等により時間を稼ぎながら後退、敵を引き付けます。その間行動の自由を得たもう一隊は、各都市の攻略を進めこちらの勢力範囲を広げます。同時に水面下での工作も行う事になりますが、それが広がれば広がる程ランスから離反する動きが顕著になるでしょう」
「手薄になったリーザス城は突かんのか？」
とペガサス。
「恐らく守備隊は置いてあるでしょうし、それを強引に攻めては犠牲が大きくなるだけです。放って置いて城門が中から開くのを待ちましょう。
……これが基本方針となりますが、何か質問は？」
諸将を見渡しつつエクスが尋ねると、ハウレーンが挙手する。
「敵も軍を二隊に……たとえばこちらの一隊に足止め程度の部隊を差向け、もう一方に主力を差向けた場合。もしくは半数ずつ程度に分けた場合は？」
「前者は確実、かつ短時間に撃破可能であれば攻撃も可ですが、迂回機動した方が良いでしょう。後者だった場合は、こちらは後退しつつ合流。然る後に相手を各個撃破します。
……この様な場合戦闘も止むを得ませんが、基本的に戦いは避ける事を頭に入れておいて下さい」
「相手がリーザス城に篭って動かない場合は？」
次にドッヂが尋ねる。
「出て来ないなら構いません。そのまま周辺都市を攻略していきます。ランスがそのように消極的であれば、彼に対する潜在的な反対勢力が顕在化するだけです。いずれ内から崩れるでしょう」
その後、幾つか質問がされたがエクスは淀みなく答え、諸将は納得し勝利への自信を深めた。
「それでは、僕はハウレーン、サカナク、ジブルを率いてバランチ方面に向かいます。ペガサス様、ドッジ、メルフェイスの部隊をお預けします。サウス方面に向かって下さい」
「うむ、任せておけ」
「確実に勝てると判断しない限り戦闘は避けて下さい。また兵数から言って、相手はまずそちらを狙ってくると思います。気を付けて下さい」
「分かった。あの偽王めの首をこの手で落とせないのは残念だがな！」
そう言って笑うペガサスに苦笑を返したエクスだったが、直ぐに表情を改める。
「それでは軍議はこれまでです。皆さん出撃準備に掛かって下さい」
エクスの言葉に全員が立ち上がり敬礼すると、必勝の信念も固く会議室を出て行った。
最後に残ったエクスは、ゆっくりと部屋を出ながら心の中で呟く。
（…………遂に味方と戦争か……。味方と戦う為に兵を鍛えてきたんじゃないんだけどね……。本当にこれで良かったのだろうか……
ペガサス様は、リーザスを乗っ取った偽王ランスを討ち、正しいリーザスを取り戻す聖戦と言われたけど……
確かに、あのランスと言う男、信用出来ない部分が多過ぎる……。あの国民に対する演説も呆気に取られました。あれでは、民は着いていく事など出来ない。事実、反感を持っている者がいるのだから……それは、国の荒廃を示す事になる……
だけど、そんな中で気になる事……。あの聡明なバレスさんやリックさんが、あの男に味方をする事。お二人は確か、リーザス解放戦争時にランスと共に戦ったという事だけど……。あのお二人は、僕の知らないランスを知っているのか……
…………考えれば考える程、訳が分んなくなるなぁ……。どの情報を見てもランスは、王に相応しいとは思う事が無理な程目茶苦茶な人だし）
事ここに到っても未だ消えない迷いを何とか振り払い、エクスは顔を真直ぐ前に向ける。
（…………でもまあ……考えても仕方の無い事だな。賽は投げられてしまった。後はもう……戦うしかない……僕は反乱軍のリーダーになってしまった……。僕が揺らげば、僕を信じて戦ってくれている人達も揺らいでしまう。
僕が今考えなくちゃいけない事は……、この戦いに勝ち、そして民の為、国の為に何が出来るかっていう事だ……）
「メナド将軍の部隊だけ。しかも街の中ではなく、街の前面に布陣しているのですか？」
報告を聞き、エクスは僅かに首を傾げた。既に攻略したバランチの次の目標である、このウェス方面にはメナドだけではなくキンケードも来ている事を掴んでおり、その一部がウェスで活動している事も判っている。もっとも判っているのはその程度で、それ以上の事は殆ど入ってこない。これは諜報戦において反乱軍が国王軍に遅れを取っている事を意味し、その事はエクスに不安と焦りを生んでいた。
「しかしエクス将軍。キンケードがメナドに合流したところで相手の兵力は二千強程度で、こちらが優勢です。それを二つに分けたと言うのなら、こちらにとって好機というだけです」
ハウレーンの強気な発言にエクスは答えず、相手の意図に考えを回らす。ペガサスの方にはコルドバが向かった事も判っている。恐らく相手の主力は未だ準備が整わず、コルドバとメナド、キンケードらは時間稼ぎをする事がその目的であろうことは明白だった。そして先日、どうやら国王軍の主力はペガサス達の方に向かったらしい、という情報も入ってきている。であるならば、当分は援軍が来ないであろうメナドの部隊を此処で速やかに撃破する事は間違っていない……筈であった。
「将軍、敵の意図が時間稼ぎにあるのなら、我々が手を拱いている事は、敵の手に乗る事になりませんか」
ジブルが言う。いま一人、サカナクは黙したままである。
ジブルの言は確かにその通りであったが、エクスの理性以外の部分は自分達が質の悪い詐欺に掛かったような予感が拭えないでいた。しかし彼は戦いにおいては理性を優先する人間である。軽く頭を振るって不安を追出すと、エクスは命じた。
「全軍前進。メナド将軍の部隊を捕捉し、撃破します」
赤の軍副将メナドはウェスの東側に陣を布き、接近してくる“敵軍”を待ち受けていた。
「メナド将軍！ 敵は現在前方五qの地点にあり。兵力約四千。接近中です！」
伝令の報告にメナドは顔を引き締める。
「あと一時間程で接触するね。キンケードさんとリーザス城に連絡して。
……確認するよ。ぼく達の役目は、相手と一当たりした後速やかに後退、ウェスの街に相手を誘導する事だよ。いいね」
メナドは彼女の前に集まった部隊指揮官達を見回して言う。メナドは女性、しかも若年であるが士心は得ている。各指揮官達は緊張はしているものの、メナドの言葉にも怯えた風はない。メナドはその様子に一つ頷くと言う。
「よし！ 戦闘準備！」
両軍が接触し戦闘が開始されて三十分。数の優位を背景として小細工抜きで押してくる反乱軍に、メナドの部隊は既に劣勢に追い込まれていた。
（思っていたより持たなかったなあ……。ううん、エクス将軍とこの数を相手に、ここまでやっただけでも上等か……）
思いを巡らすメナドの耳に、悲鳴じみた報告が入ってくる。
「将軍！ 右翼、敵の攻勢を支え切れません！ 増援願います！」
（あっちの左翼はハウレーンさんか。流石、と言うべきかな？ このまま押し切られれば側面を突かれる事になる……。ちょっと早いけど引き時だね）
「予備隊を右翼に投入して向うの足を止める！ その後、計画通りに後退を開始！ 怪我した者を見捨てないで！」
メナドはなけなしの予備隊の投入を決意した。これを直卒して右翼に向かおうとした彼女の脳裏に、予備隊にいる“恋人”の事が浮かぶ。だが頭を振ってそれを押さえつける。
とにかく今は敵を押さえる事だ。それが出来なければ……全てが終わりだ。
ウェスの街中にある教会の尖塔。ここに二人の人間が陣取っていた。
街で最も高い位置にあるここは下界を眺めるのに最高で、そこで行なわれている戦闘の様子が良く見えた。
メナドの部隊に喰い付くようにして街に侵入した反乱軍だったが、街に入った途端手荒い歓迎を受けた。
逃げる敵兵を追い街路を突進してきた反乱軍兵士達は、建物の屋上や屋根に隠れていたキンケード配下の青の兵士達に矢を射掛けられ、石やレンガ、瓦を投げられ、煙幕代わりの灰を浴びせられ足が止まった。それでもなお追撃を続けようとした者達もいたが、灰で目晦ましされた所に道を塞ぐように倒された即席の櫓で圧死する者が出るに及んで、それを断念せざるを得なかった。
無論、青の兵士達は屋根伝いに逃げ出し、またエクスが街を迂回させた一部隊も予想進路に仕掛けられた障害物と罠によって速度を低下させられ、メナド（と青軍の一部）は遂に反乱軍の追撃を逃れた。
「……ふん、予定通りだな」
メナド達が街を離脱し、それと入れ替わるようにして反乱軍が入ってきたのを確認すると、尖塔にいた内の一人――左頬に刃物で抉られたような傷のある男は独言ちた。
「おら、愚図々々してねえでさっさと合図しやがれ！」
「は、はい！」
頬傷の男がもう一人の男を小突きながら言うと、その気弱げな眼鏡の男はあたふたとしながら不器用な手付きで信号灯を明滅させる。
すると街から離れた場所で、それに応えるような光の明滅が見えた。そのまま暫く待っていると先程の光とは違った紅い光が灯り、やがてそれは数を増し明るさも強くなっていく。同時に黒煙が立ち昇り始める。
それを見た男は愉しげ――本人はそのつもりだろう――に笑うと、相方に言う。
「引き上げだ」
「はい〜」
眼鏡の男はあたふたと立ち上がると梯子を降りようとするが、信号灯を持っている為素早く降りる事が出来ない。
「とっとと降りろ、この馬鹿！」
「むぎゅっ……うわ〜〜〜〜っ！」
頬傷男に頭を踏み付けられた眼鏡男は哀れにも足を踏み外し、下まで落ちてしまう。男はその有様を詰まらなそうに見て鼻を鳴らすと自分も降りようとする。が、梯子に足を掛けた時、もう一度下界を見やるとニヤリと笑って呟いた。
「……It's show time!」
「何だと！ 食糧を出せない！？」
糧食を焼討ちされた反乱軍は、後方に補給物資の輸送命令を出すと共に、ウェス都市長に食糧供出を要請した。それに対する返答への反応が先程のものである。
「都市長、我々は徴発を行なうつもりはありません。然るべき代価はお支払いするつもりですが……」
ハウレーンを宥めつつ、エクスがウェス都市長に話し掛ける。
「いえいえ、無論貴方達に協力するつもりが無い訳ではありません。ただ残念な事に、この街には貴方達にお譲り出来るような余分な食糧が無いのです」
その答えにエクスは眉を顰める。
「どういう事です？ ……ひょっとして、国王軍はこの街で強制徴発を行なったのですか？」
「いえ、そんな無茶はしませんでした。ただ暫く前に食糧を市価の三倍で買い上げると布告がありまして。この街の商人達は先を争って食糧を売りましたよ。連中、この近郊の村々からも買い付けていたようですから、恐らく貴方達の望む物は手に入らないかと……」
「そうですか……。仕方ありませんね。我々としても市民の生活を妨げる事は望むところではありません」
「申し訳ありません。こちらとしましても、食糧は無理ですが、貴方達に出来るだけの協力は惜しまないつもりです」
「御心遣い感謝します。……それでは今日の所はこれで失礼します」
恐縮してみせる都市長にエクスは丁寧に礼をすると、なおも何か言いた気なハウレーンを促して部屋を辞した。
「いや、名演技でしたな都市長」
エクス達が部屋を出て暫くすると、奥の部屋に続く扉から拍手をしながら男が現れた。先程尖塔にいた二人連れである。
「あれで……よろしかったのでしょうか？」
気弱げに言う都市長に、頬傷男は頷いてみせる。
「ええ、上出来です。貴方の働きはきっと陛下もよしみ給うでしょう」
そう言って男はにこやかに笑い掛けるが、都市長には悪魔が笑ったようにしか見えなかった。
と、そこに眼鏡男が尋ねてくる。
「あの〜、どうして先程エクス将軍を殺してしまわなかったのでしょうか？ さっきなら簡単だったのに……」
「…………」
「……はうっ！」
頬傷男は無言のまま右アッパー。更に、錐揉みしながら床に倒れ伏した眼鏡男に容赦無くストンピングを浴びせる。
「馬鹿かてめえは！ ここであの大将を殺したら、残った連中が死ぬまで戦いかねねぇだろうが！」
「ひいっ、すいません！ 痛い、ゆるして！」
散々踏み付けて漸く気が収まったのか頬傷男は足を除けると、呆気に取られている都市長に顔を向ける。
「ったく、これだから学のねえ奴は……
いや都市長、お騒がせしました。我々もこれで失礼させて頂きます」
「は、はあ……」
生返事を返す都市長に、男は一礼をして部屋を出ようとするが、
「いつまで寝ていやがるんだ、このボケ！」
「あうっ！」
最後にもう一度、床に転がったままの眼鏡男に蹴りを入れる。
「畜生、いつか殺してやる……」
眼鏡男の呟きは、当然の事頬傷男の耳に届く事は無かった。
市庁舎を出たエクスはいつにない厳しい表情で、直ぐ後に続くハウレーンに命令した。
「直ぐにこの街を出てバランチに退きます。直ちに部隊を纏めて下さい」
「は？ しかし……」
ここまで来て、と続けようとしたハウレーンの台詞にエクスの言葉が重なる。
「我々は完全に誘い込まれました。相手は我々をこの街に封じ込め、飢えさせるつもりです」
「……それなら、直ちにメナドの部隊を追撃するべきではないでしょうか？ 彼等が退いた先に補給部隊がいる筈ですし」
ハウレーンの積極策に、しかしエクスは首を振る。
「無理でしょう。恐らくそこには青の軍が控えている筈です。完全に防御用の陣を整えてね。そこに逃げ込んだ赤軍と合わせれば、とても短時日での突破は出来ないでしょう」
ハウレーンも青軍の防御戦における能力は知っており、それを過小評価するつもりは無い。唇を噛みながらもエクスの予測を肯定するしかなかった。
「……分かりました。直ちに後退の準備を……」
そこまで言った時、一人の白の兵士がこちらに駆けて来るのが目に入った。
「……将軍！」
「どうしました？」
その兵士の只ならぬ様子にエクスもハウレーンも緊張する。全力疾走してきたであろうその兵士は、二人の前で止まると大きく息を吸い、言葉と共にそれを吐き出した。
「橋が……！ バランチへの橋が落とされました！」
ハウレーンは思わず救いを求めるようにエクスを見たが、彼は天を振り仰ぎ暫く動かなかった。
『……反乱軍の占領により一時リーザス王国を離脱した各都市ですが、その後の王国への復帰宣言に対して、王国側は反乱軍への協力は脅迫により強いられたものと認め、各都市首脳部等への処罰は行なわれておりません。
さて、反乱軍側は別働隊の壊滅に続き、脅迫を行なった諸都市にも見捨てられ、ウェスにいわば島流しにされた状態にある訳ですが……、この後、反乱軍はどのような行動に出るのでしょうか？ 解説の切り裂き君？』
『どうもこうも、ここまで来ちまったら勝負は決まったも同じだ。王国側の勝ちは動かねえよ。反乱軍はさっさと降伏しちまった方がいいんだが、連中つまんねえ面子があるからな。実際、別働隊の方も止せば良いのに戦いを仕掛けて結局全滅だ。けっけっけっ……』
『ははは……。あっと、ただ今入りました未確認情報に拠りますと、ウェスの住民と反乱軍の間にトラブルが起こり、怪我人が出ている模様です』
『まあ、国王陛下に対する不満以外に大した理由も無く反乱を起こした連中だからな。こんな状況になればトラブルの一つや二つは起こすだろうよ』
『なるほど……。有難うございました。続いて気象情報です』
『はぁい、お天気おねーさんでぇす！ 今日は……』
「くそっ、勝手な事を……」
魔法ヴィジョンを消し、ハウレーンが忌々しげに毒づく。
反乱開始当初、マスコミの大部分は中立と言う名の日和見、残りは反乱軍寄りの姿勢を見せていたが、現在は程度の差こそあれ反乱軍に批判的なものが目立つ。中には彼等を“賊軍”呼ばわりするする所もあるくらいである。
しかし彼等にとっては忌々しいばかりなのだが、行動が封じられているのみならず、情報すら押さえられつつある現状において、魔法ヴィジョン等は重要な情報源であった。実際、別働隊の壊滅を知る事になったのは魔法ヴィジョンによるものが先であった。
そして、反乱軍の置かれている状況はニュースで言われているものと大差は無い。良く言って最悪の三歩手前、と言ったところである。ウェス住民とのトラブルを避ける為街の外に野営している彼等の食糧は、その大半が焼討ちされた事により底を尽き掛けていた。何人かのウェスの人間が食糧を提供してくれたものの、あくまで個人が善意で行ったものであり、とてもではないが彼等の胃袋を満たせるものではなかった。
かと言って街から強制徴発などを行えば、それこそ自らを“賊軍”に堕す事になる。今でさえ、反乱軍の存在に不安を覚えるウェス住民の一部が、付近から退去してくれるよう要請に来て、危うく兵士達と口論になりかけた事もあった。その時は急いで駆け付けたエクスによって事無きを得たが、反乱軍とウェス住民との間に生まれた溝は最早消えそうに無かった。魔法ヴィジョンでの住民とのトラブル云々は、恐らくこれが誇張――恐らく人為的に――されたものだろう。
「仕方ありません。彼等にも彼等の立場というものがあります」
ハウレーンを宥めるエクスの顔にも疲労の色が濃い。何とか現状を打開すべく考えを回らすものの、有効な手段が見付からないのでは仕方が無い。これまで、陣を構えて動かないメナドとキンケードを誘い出そうと何度か挑発もしたが相手は全く応じず、先日国王軍主力がこちらに到着する事となっている。また、何とか渡河可能地点を探して後退する事も考えたが、装備の放棄をせねばならないそれは、どう言い繕っても“敗走”と見られる事は必至である。そんな状態で退いたところで王国の手が――正確にはマリスの――回っているであろうオークスを始めとする後方の都市が、彼等を受け入れる事はあるまい。
流石のエクスもここまで悲観的な状況にあっては、せめて別働隊が半分でも残っていてくれたら、或いはペガサスに「正規軍とは戦うな」とはっきり言うべきだった、などと愚痴じみた考えが頭に浮かぶ。それらを何とか頭から振り払いハウレーンを促す。
「……それより、報告の方を続けてもらえますか」
「はい。最近、脱走兵が増え始めています。取り締まり、規律を強化してはいるのですが、あまり効果をもたらしません」
「まるで沈没船から海に流れていく鼠の様だね」
「エクス将軍。沈没船など……」
自嘲気味に呟くエクスに、ハウレーンは血相を変える。
「副将の君相手だから言える事だね。これがペガサス様相手だったら、僕は殴られてるよ。
僕は頭が良いだけで、いざ肉弾戦となると、からっきしだから……。脱走兵か……」
「申し訳ありません。なんとかこれ以上は……」
頭を下げるハウレーンにエクスは片手を振って言う。
「君が謝る事じゃあないよ。自分の生まれた国に楯突いているんだ。少しでも旗色が険しくなったら逃げる者を責める事は出来ないよ。逃げたい者にだって家族がいるんだ。逃がしてあげなさい。
あ、それと厳しくした規律も僕の名前において撤回して下さい」
「…………はい……」
肩を落として立ち去るハウレーンの背中を見ながら、エクスは再び考えに沈もうとする。
（…………負けた……かな、この戦。う〜〜ん……どうやら僕には人を見る目が無かったみたいだね……
…………ランス……王……か……）
と、そのエクスを近付いてくる足音が現実に引き戻した。
「エクス将軍、朗報です！」
退出したばかりのハウレーンが、先程とは打って変わった表情で飛び込んで来る。
「どうしました？」
「はい……。間諜からの連絡で、ウェス北側の陣地に対する補給と兵力補充が行なわれるそうです。これを襲撃して食糧を手に入れれば……」
「罠ですね」
興奮するハウレーンをエクスは一言で抑える。
「確かに補給と補充は有り得る事です。ですが、今その情報がこちらに来るのは怪しい。恐らく間諜は意図的にその情報を掴まされたか、既に寝返った可能性が高いでしょう」
「で、ですが……」
「言っておきますが、出撃は厳禁します」
「…………分かりました」
諦め切れないハウレーンに重ねてエクスが言うと、彼女は漸くそう口にした。
再び退出するハウレーンを見送り、エクスは彼女に聞こえないように独言ちる。
「それに、たとえ食糧を手に入れたとしても、それは敗北までの時間を引き延ばすに過ぎませんよ、ハウレーン……」
日没後、エクスは落ち着かない素振をしたハウレーン麾下の兵士達を見付けて声を掛けた。
「君達、どうしたんだい？」
「はっ、将軍！ ……い、いえ！ 何でもありません！」
言いつつ、その兵士達はエクスと目を合わそうとしない。その様子を見てエクスの脳裏にある考えが浮かんだ。
「ハウレーンは何処です？」
「ハウレーン将軍は……そ、その……」
「もう一度聞きます。彼女は何処に行きました？」
再び問われた兵士は静かな威圧感に、口篭もりながらも、ハウレーンが二百人程の兵を率いて補給部隊襲撃に向かった事を答えざるを得なかった。
一方、その答えを聞いたエクスも一瞬絶句する。
「それで、出発したのは何時です？」
「は！ 既に三時間になります！」
「三時間……それではもう……」
「間に合わない」とは口に出せなかった。
（生きていて下さいよ、ハウレーン）
エクスは彼女が生き残る事を祈るしかなかった。
路傍の潅木の陰に潜み、ハウレーンは戻ってきた偵察の報告を受けていた。そこにいるのは彼女だけではない。顔や鎧を泥と炭で汚し目立たないようにした兵士達がその付近にいた。
「護衛の兵は我々と同程度か……。恐らく後方にもう一隊がいて、こちらの襲撃と共に前進して挟撃するつもりだろう。
よし、計画通りだ。一班から四班は護衛兵の相手をする。五班はその間に御者を追払え。手綱を奪ったら他の者に構わずウェスに向かえ。到着するまで手綱を緩めるな。……この戦い、速さが勝負だぞ！」
ハウレーンの前にいる者達は無言で頷くと、そのまま静かに指揮すべき者達の所に散っていった。ハウレーンも改めて腰を低くすると、向かって来るであろうものを待ち受けた。
待つ事暫し。近付いて来るうし車の姿を、欠けた月の弱々しい光が浮かび上がらせた。人の声はしない。車輪が路を踏む音、車体が軋む音、うしが時折鳴くにゃあという声が微かに聞こえる。
やがて隊列の中央がハウレーンの前に来た時彼女は立ち上がり、剣を抜き放ちつつ駆け出した。護衛兵と思われる人影に狙いを定め、駆け寄る。
ハウレーンに狙われた人影は、彼女が数ｍの距離に近付いた時漸く振り向こうとしたが、構わず剣を振り下ろす。
剣と冑がぶつかる音と共に、相手は崩れ落ちる。
他の班に合図はしない。彼女の攻撃が合図となる。そこかしこで剣戟の音が湧き起こり、襲撃を告げる声が辺りに響く。
ハウレーン達の猛攻に、不意を突かれた護衛達は直ぐに押され気味となり、やがて逃げ出す者も現れる。
そして、うし車に取り付いた白の兵士は、その御者を追払い御者台に乗り込んでうしに手綱を当てようとする。
が次の瞬間、荷台から突き出された槍の穂先に背中から貫かれ、その兵士は絶命する。それを見て驚きの声を上げようとした兵士の顔面にも槍は突き込まれ、彼の命を奪い去る。同様の光景が他でも起こり襲撃側が事態を悟った時、うし車の幌が取り払われた。
突然の事に驚く白の兵士達に、積荷に代わって荷台にいた兵士達は、近くの相手には槍を突き出し遠くの相手には矢を放つ。呼応するように押されていた護衛も態勢を立て直して反撃を始め、逃げたと思った者達も迂回して襲撃側の側面を突いた。
「くっ！」
ハウレーンは唇を噛む。
罠だと判っていた。罠と判っていて、それを食い破るつもりだった。だがその罠は思っていた以上に強力で悪辣だった。
「ハウレーン将軍！ このままでは！」
白軍の指揮官の一人がハウレーンに声を掛ける。
「ああ！ 退くぞ！」
「しかし、ここで背を向けたら……！」
「分かっている！ 私と一班の者が殿を務める！ 他の者は何とか血路を開いて脱出しろ！」
「将軍！」
「問答はこれまでだ！ 行け！」
彼は暫く躊躇していたがどうにか頷くと、周りに声を掛けながらハウレーンから離れて行く。
やがて戦場は新たな動きを見せ始めた。白軍の大部分が戦場を離脱する動きを見せ、残りの一部とハウレーンがそれを援護すべく益々攻撃を激しくする。
（……済まない。私の我侭に付き合わせてこんな事になってしまった。せめて一人でも多く脱出してくれ……！）
ハウレーンの祈りにも似た思いだったが、それを聞いた神はいなかった。もっとも“神”がそれを聞いたとしても、叶える事は無かったであろうが。
彼女の背後から新たな鬨の声が上がり、同時に絶望の声が響く。
「赤の軍だ！ 赤い死神が来たぞ！」
それに応えたのは二種類の声。悲鳴と歓声。
悲鳴を上げた者達にとっては、先程の声は正しく死神の到来を告げるものだった。死神に率いられた赤い猛獣達は脱出者達の下腹を喰い破ると、そのまま内臓を喰い千切っていく。
脱出させようとした部下達がなす術も無く打ち倒されていくのを、ハウレーンは暫し呆然と見ていた。その時、部下が割って入らなければ、彼女の首は名も無い兵士に討取られていただろう。
「将軍、大丈夫ですか！？」
「……くそっ！」
声を掛ける部下に応えず、ハウレーンは駆け出す。夜目にも鮮やかな赤い光に向かって。
「リック将軍！」
「ハウレーン、君か！？」
対峙する二人を避けるように人の群れが割れる。
「ハウレーン、どうしてこんな事を……。御父上……バレス将軍も苦しんでいらっしゃるぞ」
「これも国を想えばこそです。それに父は関係無い……。いや、父の目が曇っているなら、娘である私の手で父の蒙を払う！」
「……聞く耳は持たないと言う事か……？」
「おう！」
答えと共にハウレーンは地を蹴り、間合いに入ると同時にリックの胴目掛けて突きを繰り出す。実力的に数段上回るリックを相手に受けに回れば、勝機が無くなると判断しての先制であったが、
「っ！？」
剣先がリックの鎧の隙間に吸い込まれるかと見えた瞬間、いつの間にかショートソードサイズになっていたリックの剣がハウレーンの剣の刀身を斬り飛ばした。
如何に剣の腹を狙ったとはいえ、それ程切れ味に優れている訳ではないバイロード――それでも並みの剣を上回るが――で剣を叩き斬るのは尋常な腕ではない。物理的にも心理的にも衝撃を受け、半分以下になった剣を取り落としたハウレーンが立直る暇も与えず、今度はリックが突進し鎧の分厚い肩当を彼女にぶち当てる。咄嗟にガードしたものの数ｍ吹き飛んで地面に転がったハウレーンに追い縋り、リックは彼女の腕を取り捻り上げる。
「くっ……、殺せ！」
「殺しはしない。君は勿論、他の者もね。……だが暫く眠っていてくれ」
言って、リックはハウレーンの首に手刀を打ち付ける。リックは力を失ったハウレーンから手を離して立ち上がると、固唾を飲んで二人の戦いを見守っていた者達に向かって声を張り上げた。
「戦いは終わりだ！ これ以上の抵抗は無意味だ、投降してくれ！」
その声は兵士達を血の酔いから覚ましていき、それと同時に戦場からは潮が引くように剣戟の音が引いていった。
……この反乱での最後の戦いは終わった。血を流す者はこれが最後ではなかったが。
反乱軍司令部の私室――といっても司令部としている天幕の中を仕切っただけのものだが――でエクスは一人椅子に座り、じっと目を閉じている。
（もうここ迄ですか……
ペガサス様は僕より先に逝ってしまった……。あの方が一番リーザスの為を想い、軍のムードメーカーだった……。僕自身もあの方の勢いに飲まれるみたいに、反乱軍に参加した。
そんなペガサス様が先に……。荒っぽくて、口の悪い人だったけ騎士道を教えてくれた事や、優しかった事を思い出すと……憎む事は出来ないな……
兵も、大勢失った。…………やはりこれは、僕の作戦ミスだよなぁ……
僕は自分が思っていたより、能無しだったのか……それとも、運がなかったのか……）
自分が至らなかった所、力が及ばなかった事ばかりが浮かぶ。それにしても、今回の反乱では完全に相手の掌の内で踊らされていた。何者かが描いたシナリオに沿い、割り振られた役を演ずる役者のように。自分では舞台監督くらいのつもりであったが、とんだ三流役者であったようだ。それとも……道化と言うべきか。
そして、未だ自分に付いて来てくれている三千以上の将兵達の命に対する責任も投げ出す訳にはいかない。彼等をどうして、そして自身はどうすべきなのか。いや、どうすべきかは……自分でも解っているのかもしれないが。
この劇の幕引きが近付いている事も解っている。が、未だ考えは纏まらない。
（………………どっちにしろ、もう後はない。
ただ、どうこの反乱の始末を着けるにせよ、気掛かりはリーザス……
僕が思っている様な荒廃の日が来なければ……ただそれだけが……）
「将軍、失礼します！」
考えに沈むエクスに、外から兵士が声を掛けた。エクスは目を開けてそれに応える。
「どうしました？」
「は！ 国王の使者を名乗るものが来ております。如何致しましょうか？」
「……会いましょう。その方をこちらへ。それと皆を集めて下さい」
「は！」
踵を返す兵を見送り、エクスは呟く。
「ひょっとして、僕はこれを待っていたのかな……」
この劇の終わりを告げ、幕を引いてくれる者を。
そしてエクスは立ち上がり、足を踏み出す。
その者に会う為に。
エピローグ
鎧を着けず剣だけを佩き、後は僅かな身の回りのものだけを身に付け、歩き出そうとしていたエクスは後ろから掛けられた声に足を止めた。
「やれやれ……間に合わないかと思いましたよ、将軍」
「ハイアット殿、将軍は止めて下さい。僕はもう将軍じゃありませんよ」
言われてハイアットは困ったように頭を掻く。
「そうでしたかね……。ではバンケット殿」
その堅苦しい物言いに、今度はエクスの方が苦笑する。
「エクスで良いですよ。それに僕の方が年下なのですから呼び捨てで結構」
「……了解です。では私のことはアルと呼んで下さい」
そしてお互いに笑い合う。暫く前の長いとは言えないやり取りで、二人の間に友情と言えるものが生まれていた。
「それで……ただ見送りに来てくれただけとは思えませんが？」
「そうそう、これを渡しておこうと思いまして」
そう言ってハイアットは封書を二通取り出し、エクスに手渡す。一通は宛名とハイアットの署名が書かれているが、もう一通は表も裏も何も記されていない。
「一つはその宛名の人物への紹介状。その人はオクの手配師の元締めで、裏の世界にも顔が利きます。ですが信用は出来るし、侠気のある人物です。行く当てが無いのなら行ってみて下さい」
「……変わった人物と知り合いなんですね」
「親父の友人です。私もガキの頃は世話になりましたが」
エクスは頷くと、もう一つの封書を取り上げる。
「で、こちらは？」
「それは読んでのお楽しみ。出来れば読んだ後、燃やして貰えると有難いです。
……ああ、恋文や不幸の手紙ではありませんよ」
その下手な冗談にエクスは困ったような顔をする。が、直ぐに二人とも表情を改めると、別れの言葉を口にする。
「それではエクス、気を付けて」
「有難う。また会いましょう、アル」
街道を暫く進んだエクスは、周りに人がいない事を確認すると懐から宛名の無い封書を取り出す。開封して文面に目をやると、ただ一文。
『彼が暴君となった時に備えられたし』
それを見て一瞬呆気に取られたエクスは、やがて笑い出す。
「なるほど、燃やしてくれと言う訳ですね。下手をすれば反逆罪に問われかねない。……変わった人ですね、彼は」
これを見れば、もう一つの「紹介状」の意味も理解出来る。そこにいればあちこちから情報が入ってくるし、彼の方からも情報を流す、という事だろう。
ふと、ハイアットが言った事を思い出しつつ、燐棒を取り出す。
『まあ、事を起すのが些か性急に過ぎましたか。それと、やり方が正直過ぎた……という所でしょうか』
火を点けられた手紙は、忽ち半分程が燃え上がる。エクスが手を離すと風に舞いながら全てが灰となり、空に散る。
「……そうですね。僕がやるべきはこれだったかもしれませんね」
それが舞い散る様を見ながらエクスは呟く。
そしてその風に導かれるように歩き出す。
今度は迷いの色は無く。
後書き
「偽書・鬼畜王ランス伝」の外伝。その第一弾です。
元々本編の方はハイアットの日記という形式で書かれている為、どうしても彼の見た事、聞いた事、そして考えた事に限られますし、日記に書かない事や書けない事――一応、機密に関わる立場にいる訳で――だってあります。それを補完する為の外伝を書くことは、予め決めていた事ですが……本編がまだ半分もいってないのに良いのかな、という気もします。（笑）
まあ今の所、あと二三外伝用のネタがありますので、本編の展開に合わせてこれからも書いていく事になるでしょう。
それと今回出てきた頬傷＆眼鏡の凸凹の元ネタ――というよりそのまま――は……判る人は笑って下さい。ちなみに彼等の所属する“オメガ”は、リーザス王国情報局の実行部隊で、マリスの私兵とも言うべき物、という設定です。この後も各地で暗躍している筈ですから、或いはまた外伝にでも――そして本編にも少しくらいは――出てくるかもしれません。